研究室紹介
2050 年に 90 億以上に達すると予想される世界人口を養うためには、農業生産を 70%増加させなければならないとの予想がなされています。気候変動、石油など地下資源の減少といった問題もますます深刻化しており、食料安全保障の強化に向けては、いかに持続可能な形で農業の生産および生産性を引き上げるか、また、収穫したバイオマスのロスをいかに少なくするかが重要です。そこで、私達の研究グループでは東南アジアや南太平洋に自生するサゴヤシに注目しています。
このヤシは、作物栽培が困難な痩せ地や酸性土壌、汽水域周辺にも適応し、1 本の幹に約 300kg ものデンプンを蓄積します。原産国では、主食として、また、ビスケットや麺など食品原料に利用されています。日本ではうどんなどの打ち粉に使われている他に、食物アレルギー対応食品材料、コスメアイテムとしても使われています。しかし、現状では、天然林や半栽培の形で存在するサゴヤシ林のうちの 10 分の 1 しか利用されておらず、経済植物としての開発が望まれています。
当研究室では、サゴヤシの塩害土壌や酸性土壌への適応、メカニズムの解明、フィールドでの生育追跡調査を通じてサゴヤシの安定的栽培管理技術の開発に当たっています。 (江原)
近年の気候変動の影響による土壌環境の劣化によって、不良土壌環境条件における作物の安定かつ持続的生産が重要課題となっています。作物のストレス耐性に関わる形質として、これまで多大な時間と労力を必要とし敬遠されてきた根の形質に、近年急速に注目が集まっています。根系は土壌環境の変化に応答して、外部形態だけではなく、内部組織構造をも変化させます。私たちは、イネを中心に、乾燥や、窒素欠乏などの土壌環境ストレスに適応した、効率良く養水分吸収ができる根系構造と生理機能の解明に取り組んでいます。また、水耕条件から根箱法や円筒チューブを用いた土耕条件まで、根系形質の評価方法の確立にも取り組んでいます。
(仲田)